パート2が前作を超えるのは難しいと言われる。が、第1作にB級作品のにおいが強い場合は逆のケースが多くなる。「ターミネーター」や「エイリアン」がその好例だ。想定外のヒットがスポンサーを呼び込み、続編には桁違いの製作費が投入されるからだ。

「新感染半島 ファイナル・ステージ」(21年1月1日公開)もその例に倣って前作より数段面白い。

4年前に公開された「新感染 ファイナル・エクスプレス」は、高速鉄道という密室空間を舞台にすることで、「ゾンビ作品」の緊張をいっそう高めたが、今作はウイルス感染で荒廃した広大な「半島」ですさまじい脱出劇が繰り広げられる。

韓国がウイルスのまん延で崩壊してから4年。香港に逃れていたジョンソク大尉(カン・ドンウォン)に裏社会の組織からもうけ話が持ち込まれる。閉鎖された半島に取り残された2000万ドルの現金を持ち帰れば、その半分を渡すというのである。韓国出身の生き残り亡命者3人とともに、ジョンソクは変わり果てた母国に上陸する。

そこには凶暴化したゾンビの群れの他、暴虐の限りを尽くす民兵集団や、ゾンビの習性を熟知してたくましく生き抜く家族もいた。

「-エクスプレス」で一躍注目を集めたヨン・サンホ監督は潤沢な予算を得て「前作よりスケールアップした世界観が作れるので、プレッシャーより喜びの方が大きかった」という。乗り捨てられた車であふれる高速道、陸に打ち上げられた船、そして樹木による侵食、積もった埃…4年間の都市の荒廃を実感させる背景だ。

襲いかかるゾンビは個々にきめ細かく振り付けられ、それぞれに「入念な演技」を感じさせる。カー・チェイスやアクションは密度を濃くした「マッドマックス」といった迫力がある。

民兵軍団の軍曹役を「シークレット・サンシャイン」などで知られるキム・ミンジェが怪演。ジョンソク大尉とともに生き残りをかけて共闘する家族の母にTBSドラマ「輪舞曲」(06年)に出演したイ・ジョンヒョン、その娘に「ソウォン 願い」(06年)のイ・レ、さらに祖父役のベテラン名優クォン・へヒョと、サンホ監督が思いのままに配したキャストはピタリとはまっている。

「ターミネーター2」や「エイリアン2」を見た時の驚き、喜びを思いだした。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)